居眠り半睡の「とほほ」な生活~^^!

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【読】杉浦日向子 隠居の日向ぼっこ@江戸を歩く

杉浦日向子 隠居の日向ぼっこ



新潮社 ¥380-(税別¥362-)


 


一話一編が8円弱!・・・心に響くぉのご紹介。


 


いくつ知っていますか!? 覚えておりますか!?


 


春 踏み台、浮世絵、すごろく、頭巾、鍵、手拭、

   はこぜん、きせる、屏風、畳、桶、矢立て、根付け。


 


夏 ふさようじ、ひごのかみ、はいちょう、へちま、軽石、

   耳掻き、かやり、蚊帳、釣忍、団扇、褌、杓子、お歯黒。


 


秋 黒髪、櫛、雑巾、湯屋、かわや、おやつ、

   熊手、丼、まめ、ねんねこ、おひつ。


 


冬 座布団、貧乏徳利、明かり、時の鐘、ちろり、赤チン、

   ゆたんぽ、火箸、炬燵、箱枕、はたき、もち・・・。


 


江戸から昭和の暮らしを彩った道具たち。

いまも伝わる暮らしの小物や、懐かしい想い出のまつわる、


いまはなき品々。


四季折々の風物である「もの」たちを、愛情こめて綴る。

人肌ぬくもりを感じさせる味わい深い文章です。


 


ちうくらいのほどよいしあわせ

 手にするなり、こんな本が読みたかったとつぶやき、


読み終えて本を閉じるなり、こんな本が読みたかったとため息が出た。


 いまどき「こんな本」は滅多にあるものではなく、

ねぇ、こんな本こんな本って、それ、どんな本なの?」と

せっつかれても、そう易々とは答えられない。いや、答えたくない。




読んでみりゃあ、わかるってもんよ」と読んだ後では言葉尻も変わってしまい、

まぁ、とりあえず目次だけでも眺めてごらんなさいな、と簡潔な目次を開いて、

いまいちど惚れ惚れとなる。目次だけでニヤついてくる。

 いいねぇ。いい言葉ばっかり並んでるねぇ。それだけで、もういいや、おしまい。

 

 --と、これでは何の解説にもならないので、野暮を承知で「どんな本」なのかと

お答えすれば、これぞこの著書の真骨頂、江戸の風物--それも特に「」に

こだわり、絵入りの随筆集ということになるだろうか。形式としては事典風であるが、

思いつくまま綴られた抜粋とでもいうか、いや、抜粋というより精枠というべきか。

とにかく、すこぶる粋な本であることに変わりはない。


 


簡潔な目次」に並ぶ項目は簡潔なだけでなく、どこかやわらかさとあたたかさを

纏っている。そこには懐かしさもあるだろう。この目次に並んだ言葉をひとつひとつ

目で追いながら、「知っている」を連発するか、それとも「知らない」を連発するかで

世代の新旧に敷居ができる。

ただし、「知っている」の中には、使っていた、見たことある、何かで読んだ・・・と、

微妙な温度差もあるはず。

 知っているつもりでも、実際に読んでみると「ああ、そういうことだったのか!」と、

自分の知ったかぶりを思い知らされる項目もある。いや、ほとんどその連続である。


 そういう意味で、この本は「知っている」を連発する知ったかぶりのための上質な

アンチョコ」にもなっている。


 



 


 ざっと見渡して、まずは「ちろり」の三文字に引っ掛かった。

ちろり」とは何ぞやと、ひもといてみれば『ほんのちょこっと』したことを指す」と

あり、転じて酒の燗をする道具の名であると説いてある。

いまの徳利と違って、銅や錫でつくられた金物の類である。

すぐさまちろりと温まるから」・・・なるほど。


 


 この一節と響き合う一行--いや、正確には二行--が「」の項の冒頭にある。

「たたみ鰯が好物で、さっと炙ったのをかじりながら、ありふれた本醸造の熱燗を、

大ぶりのぐい呑みでやっていると、ちうくらいのほどよいしあわせを感じる」




 この「うくらいのほどよいしあわせ」が「ちろり」で燗された酒の味となり、

呑むほどに、読むほどにじんわりと染みてくる。この本は、すべての項目に、この

ちうくらいのほどよいしあわせ」が染み込んでいる。ついでに、「しあわせ」と

いう甘い平仮名にケチをつけるようなヒネクレ者に向けて、著者はちろりと戒める

ような言葉をさりげなく配している。

たとえば、この「」の項の中でも「郷愁ではなく嗜好だと思う」という言葉が

鋭くきらりと光る。



 


杉浦 日向子(すぎうら ひなこ)1958年11月30日 - 2005年7月22日46歳で夭折

日本の漫画家、江戸風俗研究家。稲垣史生に時代考証を学ぶ。

NHK総合テレビ「コメディーお江戸でござる」では江戸の歴史、風習についての

解説コーナーを担当していた。

浮世絵を下地にした独特な画風に特徴があり、江戸の風俗を生き生きと

描くことに定評があった。

1993年に漫画家引退宣言をし、「隠居生活」をすると発表するも、

実際は当時「血液の免疫系の難病」を患っており、骨髄移植以外に

完治する方法はなく、体力的に無理が利かないのでマンガ家を引退する

ことを余儀なくされていたことが、死後明らかにされた。

その後は自らの生き甲斐である江戸風俗や浮世絵の研究家
として活動した。 



解説:吉田篤弘(作家)



杉浦日向子 隠居の日向ぼっこ 新潮社 ¥380-(税別¥362-)


 



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by inemuri_hansui | 2008-10-20 02:19 | 江戸を歩く | Comments(0)
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