【語】お腹立ちさま!@日々のなりわい

日々のなりわい



お腹立ちさまでしょうが」・・・


 


あやまるのは慣れているさ詫びが言えたら一人前、と先代口癖にしていたよ


 


 なるほどなあ、と私は感心し、さきほどの母堂の謝辞(この語には、お詫びとお礼の、

正反対の意味がある。こういう語も珍しいだろう)を思い出していた。


 


お腹立ちさまでしょうが」という言葉である。なつかしいような響きの、文句であった。


     


 そういえば、何々さまと、様のつく言葉がずいぶん、ある。

おあいにくさま」「おかげさま」「お気の毒さま」「お世話さま」「お粗末さま

お互いさま

おまちどうさま」「お疲れさま」「ご苦労さま」「ご愁傷」「馳走さま」・・・


      


 結婚式場で、「よいお日和(ひより)さまでございますという挨拶を聞いたことがある。

よいお日和とは口にするが、かくも丁寧に述べるのを聞くのは初めてだった。結婚式場に

ふさわしい言葉と感じ、挨拶のぬしを優雅に見た。年配のご婦人だった、と思う。


        


お腹立ちさまでしょうがと言われると、それ以上、突っかかるわけにはいくまい。

さまが、微妙に、角立てない役を果たしている。さまを抜いてお腹立ちでしょうが

言ったら、「当たり前だと、こう返ってくるだろう。


     


 さまが濁ると、ざまになる。「ぶざま」「ざまを見ろ」「死にざま」・・・

 侮蔑がこもって、良い言葉ではない。

 

生きざま」は誤用だが、これは「生き様」と書かれたものを誤読したのではないか。


と私は推測している。


    

何様だと思っているのだ」の「何様」は、何ざまでなかろうか、と友人が言ったが、真偽は

ともかく気持ちはわかる。


 



 


出久根 達郎

「セピア色の言葉辞典」 より

文藝春秋  文春文庫  税込価格:¥660


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by inemuri_hansui | 2009-01-14 18:57 | 日本語入力 | Comments(0)